TTL-NANDゲートを用いた無安定マルチバイブレータの動作モード解析

為貞 建臣,山本博資

電子通信学会論文誌(情報・システム : D), Vol. J65-D, No.2, pp.218-225, Feb. 1982 (in Japanese)

  • 近年,各種のマルチバイブレータが論理ゲートにより構成される傾向にある.本論文では,最も広く用いられているTTL-NANDゲートを用いた無安定マルチバイブレータの解析を行う.本無安定マルチバイブレータは,二つの準安定状態を交互に転移するが,その動作モードは多く存在し,各モードの生ずる条件,およびその準安定期間の計算法は一部のモードを除いてしられていない.転移は二つのNANDゲートの入力電圧 $v_i(1)$, $v_i(2)$ の一方がしきい値 $V_T$ に達すると生ずるが,$v_i(1)$, $v_i(2)$ が高電位から$V_T$ に向うか,低電位から$V_T$ に向うか,及びどちらが先に$V_T$ に達するかなどの組合せにより,多くの動作モードがある.解析の結果,素子の対称性を考慮すれば本質的に異なる正常発振モードは5個(形式的には7個)あることがわかり,各モードの準安定期間 $T_a$, $T_b$ の計算式が得られた.又,外付抵抗が過小または過大の場合に異常発振または発振不能状態が生ずる理由も解明した.なお, $T_a$, $T_b$ がそれぞれ外付容量に比例するのは,ただ一つのモードにおいてのみである.解析結果は実験結果とよく一致している.本論文は,TTL-NANDゲートを用いた無安定マルチバイブレータの設計に極めて有用である.
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