大きな研究成果の概要

1, 再送要求を伴うViterbi復号アルゴリズム (Yamamoto-Itoh Algorithm)(論文

  • 誤り訂正符号の1つである「畳み込み符号」の最尤復号法としてViterbi復号法が知られている.そのViterbi復号に再送要求方式(ARQ)を組合わせたHybrid-ARQ方式を提案した.この復号法は「Yamamoto Algorithm (あるいはYamamoto-Itoh Algorithm)」として知られており,テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)がヴィタビ復号器をDSP(Digital Signal Processor)技術を用いて集積化したVCP(Viterbi decoder CoProcessor)の一連のシリーズに組み込まれている.

2, フィードバック通信路方式(Yamamoto-Itoh Scheme) (論文)

  • 誤り訂正符号の漸近的な性能は,誤り指数E(R)=- (log P_e)/Nを用いて評価される.ここで,N:符号語長,P_e:復号誤り確率,R:符号化レートであり,E(R)が大きいほど,Nが大きくなるに連れて,速くP_eがゼロに近づく.無雑音フィードバック通信路が利用できる場合の最も大きなE(R)は,離散通信路に対しては「Brunashevの誤り指数」,加法的白色雑音通信路に対しては「lSchalkwijk-Barronの誤り指数」として知られている.これらの誤り指数を達成する非常にシンプルな方式を提案した.この方式は「Yamamoto-Itoh scheme」として広く知られており,その後のフィードバック通信方式の基本方式の1つとなっている.

3, 多端子情報理論

  • 縦接続型通信システム(Cascade Communication System) (論文)
    通信路が多段に縦接続された通信システムにおけるレート歪み理論を世界で初めて取り扱い,その符号化定理を証明した.このシステムを拡張した通信システムに対する符号化定理に関する研究が,多くの研究者によりなされている.
  • リモート情報源を伴う通信システム (論文)
    単一の情報源から出た情報を,複数の符号器で観測し,それらの情報を復号器に送る通信システムに対する符号化定理を証明した.最近,センサーネットワークに対する符号化定理の研究が数多くなされているが,1980年に発表した論文は,世界で最初のさきがけ的な研究であった.
  • 関数値を復号するWyner-Ziv理論 (論文)
    復号器のみで,補助情報が利用できる場合のレート歪み理論であるWyner-Zivの理論を,情報源出力と補助情報の関数値を復号したい場合のレート歪み理論に拡張した.
  • 3角形型通信路の符号化定理(論文)

4, ランプ型秘密分散法の提案と理論解析 (論文)

  • (k,n)しきい値秘密分散法のスレショールド幅を1以上に拡張したランプ型秘密分散法を提案するとともに,しきい値以上の分散情報が漏れても情報がその範囲内で最も安全となる強い安全性指標を導入し,その構成法を与えた.この概念を,さらにネットワーク符号化に導入し,strongly secureなNetwork Codingの構成法を与えている.なお,「Secret Sharing Scheme」に「秘密分散法」という意訳的な用語が日本で使われているのは,私の論文に由来する.

5, シャノンの暗号システムに対する符号化定理 (論文)

  • シャノンの暗号システムに対する符号化定理を,「通信路に雑音が存在する」「 正規の受信者に歪みを許す」などの場合に一般化した.その結果,シャノンの暗号システムにおいて,「秘密鍵による符号化」「盗聴通信路に対する符号化」「レート歪み理論による符号化」に対する分離定理(それぞれで最適に符号化すれば,それらを組合わせた符号が全体で最適な符号となる)ことを証明した.また,システムの安全性を,秘密情報と盗聴者の受信情報間の相互情報量で計るだけでなく,盗聴者が秘密情報の復号において達成可能な最小の歪みで評価している.この安全性指標の導入は世界で初めてであった.

6, 競合最適性に関する定理 (論文)

  • データ圧縮符号の性能は符号語長の「期待値(平均値)」で評価される場合が多いが,その性能指標が意味を持つのは,その符号が繰返し何度も利用される場合である.符号木を故障診断などに利用する場合などで,使用回数が少ない場合には「期待値」に基づく性能評価はよい評価とはなりえない.そのようなときの性能を評価する指標として「競合最適性」がある.従来,平均最適な符号と競合最適な符号は,異なっていると思われていたが,「競合最適な符号が存在する場合,その符号が必ず平均最適でもある」ことを証明した.

7, 正整数のユニバーサル符号化法 (論文1, 論文2, 論文3)

  • 正整数nの生起確率P(n)がp(n)≧P(n+1)を満たす場合に,十分に大きなnで最も小さい符号語長を持つ語頭符号を求める問題を「正整数のユニバーサル符号化」という.非常に多くの符号化法が提案されており,それらはFlag方式,メッセージ長方式,再起記述方式などに分類されるが,Flag方式と再起記述方式に対して,非常に効率のよい符号化法を与えた.これらは各分類の中で,現在でも最も性能がよい.

8, その他(上記以外の主な成果)

などを世界で初めて提案/解析/定理の証明などを行っている.詳細は,関連論文を参照して下さい.